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「私家随想録」とタイトルを付けさせて頂いたpageですが、こちらでは店主の着物や染織に関する視線を何となく文章としたものです。
そもそも、弊店HPを開設した1999年8月にはBlogと言う存在もなく、HPの中で「店主の着物に付いてのお話」を掲載したのが、このpageを始めるきっかけででした。
恐らく、着物/染織に関するお話について客観的な情報は極めて少ないかと思いますので、知識としてご参考になるものではないかとも思います。
なお、掲載記事と掲載画像とは基本的に関係がありません。掲載画像はあくまでもイメージとして捉えて下さいます様、お願い致します。
手描き京友禅

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きものと染織のお話
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名古屋 呉服屋
Back.No_-33.
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夏大島紬/能登上布(絣織)

この夏、「麻の着物と出逢って、夏の着物が身近に感じられる様になった」と言う話を仄聞致しました。着物は好きだけど、夏の着物を控えて居られる方は少なくはないと思います。
ただ、単衣から盛夏に掛けて、そして、また、単衣に戻って行く、着物素材の様は、「着物の魅力」のひとつでもあるかと思います。着物に「熱」を上げて居られる方にとっては、憧れはある筈です。
夏の着物に目醒められた方の多くは「麻」の着物との出逢いがあった様です。
もちろん、「麻」とは言え、襦袢も着れば、肌着も付ける。その上、女性ならば帯をも締める。絶対的な暑さがあるのは事実です。時折、繊維を抜け、肌に触れる涼風を感じる事や素材の持つ涼感を実感すると、暑さに対する意識も薄らいでくる様です。

では、どうして「麻」の着物には、涼感が感じられるのでしょうか?
ちょっと面倒な話なんですが、実は、「麻」には熱を発散させる効果が確実にあるのです。
そもそも、植物性の繊維には、湿度を逃がす効果が備わっていて、中でも「麻」が最も効果に優れているそうなのです。
つまり、気温の高い環境の中で、汗ばんだ湿気を吸水発散させる効果を保っているのです(乾燥した環境と湿度の高い環境では同じ温度でも、乾燥した環境の方が涼しく感じられる事からお分かりかと思います)。ですから、「屋内に入ったた途端、"すっ"と暑さが引いて行く」と言われる事があるのは、満更ではないのです。
ただ、面白い事に、「麻」そのものは「生地」となる以前の糸である段階では、乾燥に弱いのです。生地となった麻は、湿度を発散させる効果があるのに対して、糸である麻は、湿度を必要とすると言う事なのです(南国の沖縄に麻系の着物が点在する訳のひとつかも知れませんね)。ただ、よくよく、思えば「麻」には、湿度=水分を吸収して、それを繊維の「強さ」とする力が備わっていると言う事なのです。
難しい話になってしまいましたが、要するに「麻」は、湿度調節を図る素材なのです。

もちろん、この「麻」の特性なんですが、「麻」の質に依って特性能力に違いがあります。機械紡績された「麻」であるのと手績(う)みと称される「ひとの手」に依って糸とされた「麻」です。
もちろん、「ひとの手」に依る麻の繊維には、植物繊維としての特性がより多く残っている訳で、「麻」の保つ特性もより残されているのです。
いや、むしろ、こうした特性を活かすべく、試行錯誤される事で「献上布」とされるに至ったのかもしれません。

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喜如嘉芭蕉布九寸名古屋帯

さて。。こうした「麻」の着物なんですが、実は、結構流行っているのです。
紳士物の「着物の事始め」として、この「麻の着物」を挙げられる事が多く、また、女性に取っても水洗いが効くなどの絹物と比べると利便性も高く、お声を掛けられる事も多くなりました。
「浴衣代わりの軽装着」として想えば、確かに「身近に感じられる着物」とする事も出来るかと思います。

ところで。。。今回、使わせて頂いた写真画像について反応される方も居られるかも知れません。
この「麻」の着物についてなんですが、「着物は手作り」「着物には機械作りは似合わない」と言う発想をすると、その殆どが「無形文化財」指定を受ける事となります。
越後上布の「無形文化財」指定条件がどうのとかの話は、とても多くの方が説明されているので、ここでは、割愛させて頂きます。
ただ、何百年間も変わらない手法を続けようとする事がとても困難になって来た事は間違いない事なのです。
道具がなくなったからでもなく、「麻」の原材料がなくなったからでもありません。ただ、「気の遠くなる程の長い時間」を要する作業を毎日々々続ける事の出来る人が激減して行った事も理由のひとつなのです。
これは「誰か」でなくては出来ない。工芸作家でなくては達成出来ない技術ではないのです。とても、長い時間、丁寧に糸を績む作業を繰り返す人がいなくなってしまったのです。文化財保護を施す事で、技術保存を文化庁は行っているのですが、その技術衰退の原因が、平たく言えば「人手不足」から派生したのはおかしなモノです。
ただ、半世紀前までは、越後や小千谷の里には、「上布」「縮み」の機屋が何十件もあり、日常の中に、手績み(苧麻糸)/手織の麻の着物が「上布」として織られていたのです。
現在、機屋さんは、塩沢紬を織り、小千谷紬を織り、夏には紡績された麻織の着物を織っています。
そして、越後上布/小千谷縮みは、手績みの糸(苧麻糸)があれば、百年前と同じ手法にて創られるのです。1年に10反以下となっているそうです。石川県の指定無形文化財の能登上布は、現在、山崎さんと言う方の機屋さんが1件残っているのみです。こうした1件のみの存在は、産業として成り立っているとは、到底思えません。
もちろん、年間10反以下の生産数の越後上布も、もはや、地場の産物ではなくなっていると思います。
既に、人が生活の糧としての産業ではなくなってしまったのです。あとは、携わる「人」がいなくなれば、技術伝承は確実に途絶えてしまうのです。

最後に。。。先程、「技術衰退の原因」について申し上げましたが、これは必ずしも「人手不足」に依っている訳ではありません。手績/手織の「麻」について、ちょっとだけ関心を寄せると、きっと見えてくるものがあるかと思います。同じ重要無形文化財の指定を受けている結城紬は、最盛期と比べて激減したとは言え、かろうじて「産業」として残っているのに対して、かつて「献上府」として認められた「手績/手織の麻」は根絶の危機にあります。
「夏の着物を身近に感じ」「夏の着物事始め」とされた「麻」の着物なんですが、その祖となる「麻の着物」は少しずつ遠ざかっているのです。

2005/08/** update
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