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「私家随想録」とタイトルを付けさせて頂いたpageですが、こちらでは店主の着物や染織に関する視線を何となく文章としたものです。
そもそも、弊店HPを開設した1999年8月にはBlogと言う存在もなく、HPの中で「店主の着物に付いてのお話」を掲載したのが、このpageを始めるきっかけででした。
恐らく、着物/染織に関するお話について客観的な情報は極めて少ないかと思いますので、知識としてご参考になるものではないかとも思います。
なお、掲載記事と掲載画像とは基本的に関係がありません。掲載画像はあくまでもイメージとして捉えて下さいます様、お願い致します。
手描き京友禅

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きものと染織のお話
着物の悦び
名古屋 呉服屋
Back.No_+36
着物の悦び
型絵染め(灰色印象):岡本隆志(国画会)
型絵染め(紫色印象):柚木沙弥郎(国画会)

この度のコラムは滋賀県立近代美術館/「志村ふくみ氏作品展」よりのお話となります。

染織に特に詳しい訳ではありませんが、着物/帯、中でも染織として"ひと"の手が掛かったものを扱おう、消費者となる方にご紹介をしようとすると、責任を保った知識や経験が欲しくなります。
これは染織作品を仕入れる時や展示をされる際、機屋/染め屋に赴く際に、聞ける事は聞いて、触れる事の出来るものには触れる様にしています。これが行き過ぎると「胴裏地」までにも「これ何?」と言ってしまう事があります(笑い)。

ご存じの通り、志村ふくみ氏は紬織物においての重要無形文化財技術保持者です。平たく言えば人間国宝。志村さんの作品は、個人蔵だけではなく美術館/博物館所蔵もかなりあるそうです。ここで「商品」「着物」としての紬織物に留まらず「Culture」を意識させるレベルに達していると言えます。
年を通じて代理店となっている織物商数件にて、年に5点から10点ほど眼にして来た訳ですが、一度に、数十点同時にみることが出来たのは、はじめての事でした。
染織に携わり、作品を工芸展に出品された頃の作品からはじまり、キャリアを重ねた後の作品も展示され、「藍」に関わった際の作品も展示されて居りました。

産業として、伝統工芸としてつくられる紬織物を想うと、作品の遍歴を感じることは少ないと思います。「紬」として重要無形文化財技術とされた結城紬であっても、時代を呼応した印象の織となる傾向がある事はありますが、意図的な変化が「織」に感じられる事はない筈です。技術保存が前提として「重要無形文化財」とされているのですから...。それ故、結城紬は「完成された織」を想わせます。高度な経験を積んだ職人がひいた極上の真綿糸、精緻に括られた絣、そして、居座機に依る織。すべての段階が完成された技術に依っている訳です。迷いもなく、隙もないのです。

仕事として年に数回眼にする志村ふくみ氏の作品をみて、多くの印象を感じることは、正直申し上げて、私はありません。使用している草木を想像したり、作品の印象を他のものと比べたりする程度です。ゆっくり時間を掛けてひとりの染織家の作品と対峙して、伝わってくるものを感じる余裕はありません。
美術館と言う空間と35点の作品が、これまでには感じられなかったものを伝えてくれました。

着物の悦び
めがね織名古屋帯:加藤富喜(国画会)
緯絣名古屋帯:秋山真和(日本工芸会)

滋賀県立近代美術館に所蔵されている作品の中で最も初期の作品は、志村ふくみ氏が、染織キャリアを重ねて間もない頃の作とのことでした。その作品は日本伝統工芸展にて発表され、「賞」を受けられ、直ぐに買い手が付いたそうです。

現在にして想えば、後の人間国宝ですから当たり前と解されても仕方がありませんが、その当時は「無名の新人」なのです。両親が染織家で跡継ぎである訳ではないのです。また、高度成長期以前に個人の染織家に投資をされることは多くはなかった筈です。

現在、年に複数志村さん自身の作品をみている私にとって「代表的な志村さん」と言う印象がありました。現在では、あまり見掛けない印象の作品なのかもしれません。でも、画集をみたり、「例年発表された作品」をみたりしている私には、とても強い印象がありました(もちろん美術館でみていると言う点も大きいでしょう)。
それ以降の作品にも、それぞれの意匠が感じられ、作品を創作する目論見/ねらい/テーマがあるのです。
志村さんは、その時つくられた草木の色彩があって、作品がある、と言う創造をされる事があるそうです。「草木の命を分けて貰っている」と想われ、それを作品に活かされるそうです。
「その時、つくられた草木の色」は二度とありません。二度と同じ色にはならないのです。そして創られた作品には、それぞれに志村さんの意匠が込められている事になると思います。それは現在の作品にも間違いなく当てはまると思います。

長くなって参りましたが、要するに、結城紬とは全く異なった染織なんだと思います。

美術館に展示された志村さんの作品には遍歴を思わざるを得ません。作品をつくる度の意匠やテーマに対する作者としての感情/情緒の様なものが立ち込めて居るんですね。感情/情緒と草木の色彩が作品を支えている様です。
志村さんの作品のどこからが「重要無形文化財」であるかを問うことはナンセンスかと思います。
組織団体としての「重要無形文化財技術」に依る結城紬の視点からすると志村ふくみ氏の染織作品の完成度は低いかもしれません。しかし、反対に志村ふくみ氏の染織作品(それが例えキャリアの浅い時代の作品であっても)が保っている「感情/情緒」は、結城紬には求められないものなのです。
また、結城紬にも、志村ふくみ氏の作品にも言えることは、高度に磨かれた感性と積み重ねられた技術が織物として昇華されていることだと思います。血の通った「ひと」でなくては出来ない、合理的な思考では解せないものなのだと思います。
買う物として、または、売る物としてみていたり、触れていたりしただけでは、あまり伝わって来ない時間でしたね。

2007/02/10 update
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着物の悦び
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