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「私家随想録」とタイトルを付けさせて頂いたpageですが、こちらでは店主の着物や染織に関する視線を何となく文章としたものです。
そもそも、弊店HPを開設した1999年8月にはBlogと言う存在もなく、HPの中で「店主の着物に付いてのお話」を掲載したのが、このpageを始めるきっかけででした。
恐らく、着物/染織に関するお話について客観的な情報は極めて少ないかと思いますので、知識としてご参考になるものではないかとも思います。
なお、掲載記事と掲載画像とは基本的に関係がありません。掲載画像はあくまでもイメージとして捉えて下さいます様、お願い致します。
手描き京友禅

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きものと染織のお話
着物の悦び
名古屋 呉服屋
Back.No_+38.
着物の悦び
国画会染織工芸作家添田敏子氏の型絵染め名古屋帯。
経糸/緯糸真綿糸を使い、「ばら」で染めた草木染め紬織物。
(*このコラムに出てくる国画会の某女流染織家は添田敏子氏ではありません)

愛知県の美浜町に杉本美術館なる美術館(2004年98歳にて亡くなった洋画家/グラフィックデザイナーだった故杉本健吉氏の美術館)があります。

個人作家の美術館ですから、それ程大きな美術館ではありません。洋画家であると共に連載小説のイラストを手掛けたことや広告デザインを手掛けられた作家だったため、油彩画の他にもデッサンやスケッチ、デザイン画が展示されていました。
随分と以前にも、この杉本美術館に来たことがあるのですが、この時、眼に留まった作品群は、以前訪れた時の記憶には全くなかったものばかりでした。最も、入れ替えをしていて、以前眼にしていなかったのかもしれませんが..。

この杉本美術館に、久々に車を飛ばしたきっかけのひとつ...、国画会の某女流染織家(結構有名なおばあちゃんですが)と、お逢いした際に、「名古屋には、杉本美術館があるね。。。あそこはとても楽しいし、面白いの、お勉強にもなる」と言われたのが、思い付きのひとつになったのです。
そもそも、無学/無関心が私ですから、言われれば、もう一度みておくと、またお逢いした際にも「何か」言えるし、多少私なりにも何かのお勉強にもなるかと思い出掛けたのです。

行ってみると、以前よりも、随分、小さく、こぢんまりした感を憶えました。それ程、少も少なく、「行く宛なく、たまたま一度来てみたかった」と言う印象のひとが数人見掛ける程度でした。常設個人の美術館なら、どこもこんな感じなのかもしれません。

国画会の某女流染織家の方が何を観て「お勉強」になると感じられたかは分かりませんが、私なりに惹かれた作品群がありました。

故杉本健吉氏の素描作品には、世界中の「巷」で「ひと」を描いた作品が数多く残されています。特に、眼を惹かれたのはヨーロッパの空港ターミナルでの素描作品の数々。展示キャプションには「みたものをそのまま写し取らない。みた光景を一度記憶に留めて、時間をおいて絵にする」との様なことが書かれていました。要するに、「記憶」を辿り、「印象」にて「絵」にするというのでしょうか..、その「光景」が現実にはどうであったかは、既に過去のもので、過ぎ去った、失われた「光景」であり、「時間」なのです、残された「光景」は「杉本健吉」と言うフィルターがつくったもの..、その「光景」には、至極軽いタッチの素描(言葉は悪いのですが「落書き」っぽいものまであります)であれ、「空港ターミナルのあるひとつの光景」が、写真では決して感じ得ない、柔らかな印象を伴って伝わってくるのです。
それらの作品を描くまで、巷でひとの営みや仕草を眼にしている故杉本健吉氏。多分..、故杉本健吉氏は、どこか楽しくて楽しくて仕方がなったんじゃないかな、と思うほど感覚な印象を憶えるのです。
一体何が楽しいのか(笑い)? ただ、美術館に残された作品を観ると、ちょっと良い気分になることが出来るのも事実です。

着物の悦び
双方とも菊池洋守氏の八丈織。
黒色の八丈織は「よろけ縞/まるまなこ織」
ベージュ系の八丈織は「子持ち縞/小柳市松織」

国画会の某女流染織家が、この杉本美術館で何を観て関心をそそられたかは分かりませんが、何となく気持ちは分かる気がします。

芸術作品には、圧倒的な迫力をもって迫ってくるものも少なくはありません。「それ」を観た後、魂まで洗われる想いをする事もあり、またインテリジェンスな作品は感情を貫くこともあるかもしれません。
この美術館では、もしかしたら大きな感動は期待できないかもしれませんが、何となく「誰かが良いって言っていた」と言うことが大抵は「分かる」気がするのです。

さて。。染織のお話(笑い)。この国画会の某女流染織家なんですが、お逢いした際に「先生、10年ほど前につくられた作品イメージのものは、今後ご予定はないのですか?」と訊いたんです。
要するに、私としては以前の作品が好きだから「それをやってくれ」と言いたかった訳です。
よく想えば、こうした質問はちょっと品がないですね。
染織において、職人とされる人たちは「仕事受ける」ことが多いんです。つまり、指示を待つことで腕を振るうんです。もちろん、腕の良い職人は、その限られた範囲で、創意工夫をして「我」を訴えることなく、「仕事」で「腕」を表現する事が多いのです。
染織家は、「創意」が優先されることが多いんです。つまり、創意が移り変われば、作品の趣向も変わる。そして「創意」こそ、染織家のアイデンティティだったりすると、「創意」が漲らなければ、動いてくれないものなのです。

染織家とされる「ひと」と逢うと、とても「人間的」な印象を憶えることがあります。作品についてのお話や染織のお話をすると、制作意欲や迷いなど、とても情緒的印象が伝わってくるのです。仕事というか..、染織に対して純粋な姿勢を保たれいればいるほど、人間的な印象が色濃く伝わってきます。

高名な染織家であれ、試行錯誤を幾度となく積み重ね、研鑽を積み重ねる事で、博物館所蔵品の域に達する作品となるそうです。そして、それは結果..、それまでの過程はとても「人間的」なものの様なのです。作品は、その時の「ひと」を表すものかもしません。
隙のない程完成された作品には、創意は漲っているかもしれませんが、「我」は痕跡もなく打ち消されているものです。しかし、「我」が「創意」にて昇華する事で「作品」となるのだと思います。作品には、どこか「ひと」の姿や姿勢が見え隠れするような気がするのです。

私は、所詮商人ですから、いつも「お金」のことばかり考えています(笑い)。
染織家の中には、有名無名を問わず、染織のことばかり、新しい作品づくりばかりに気を取られている作家も少なくはないのです。
杉本美術館のことを話してくれた国画会の女流染織家の方は、新しい作品づくりが楽しくて仕方がないようでした。この方の作品..、現在の作品は「楽しさ」「遊び心」に満ちています。威圧感もなく、迫ってくるものもない..、でも、眼にする者の気持ちにすっと滑り込んでくる様な作品をつくられるのです。
人柄が作品に反映されている様でもありました。

杉本美術館から出てきた時、染織や着物と直截的な繋がりを答えることは出来ませでしたが、朧気な繋がりを憶えることが出来た様な気がしました。

2009/05/19 update
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