染織家:深石美穂が手掛けた草木染め紬織です。
この作品を眼にしていると、伝統的染織技法と制作者の創造的な印象力の均衡を感じることが出来ます。とりあえず、この紬織ですが、透き通るほどの綺麗さが感じられると思います。そして、現代的なデザイン性が伝わってくるかと思います。
眼にする者に、「何が表現されているかのか?」と言う問い掛けに素直な程に答えているかの様です。
伝統的な染織技法と言うと..、それは少々"土の匂い"の様な印象が浮かぶことが多いかも知れません。また、民芸的と言う響きやその土地に伝えられた染織の香りの様なものを感じられるかもしれません。
この制作者は、石垣島に工房を持ち、その土地に伝えられた染織技法と自生する草木にて色彩をつくる染織家です。しかし、その作品は、垢抜けしていて、都会的な北欧の音楽を想わせる前衛的なる印象を保っているのです。つまり、琉球染織と言う印象からは距離を感じさせる作品とも感じられるのです。
この制作者の卓絶しているのは、作品に対する創造性の高さなのです。
まるで現代工芸の様な「円」は、伝統的な絣文様の技法を駆使することで実現されています。そして、色彩も、この制作者特有のデザイン性と絡むことで、伝統的な色彩とは違う角度で眼に映るのです。配された花織は、眼にする者からすると、琉球染織の花織には映らないかもしれません。アクセントとして配された感のある花織は、伝統的であるにも関わらず、前衛的なるデザインの如く感じられるのです。
この作品...、それ程多くの色に満ちている訳ではありません。
しかし、彩りが感じられるのです。幾つかの色が交錯している様な質感を想うのです。
それは、色と絣が、デザインの中で巧みに交錯しているからかも知れません。
色のない織物であって、彩りを想わせる...、それも、都会的な印象を伝えてくれるのです。
こうした紬織の帯地は、紬織の着物に限定されることなく、江戸小紋の様な垢抜けた印象の着物と適わせることで、都会的な凛とした装いを楽しむことが出来るかと思います。 |