染織家が手掛ける染織作品には、一様に「個性なるもの」が多かれ少なかれ感じ取ることが出来るかと思います。
"型絵染め"は、染織家が作品として制作するものの他に、染色工房で染められるものもありますが、染織家が手掛けるものは、色や構図だけではなくて、染められる素材(生地)、染料(顔料)と言った素材段階まで、制作者の意向が強く反映しているのです。
こちらにて掲載をさせて頂いた作品は、国画会にて作品を発表されている染色家室伏弘子氏の型絵染め九寸名古屋帯です。
"型絵染め"なる染色技法の起源は、ご存じの通り、沖縄の紅型に求めることが出来ます。その紅型から派生して、沖縄の伝統的なる彩色文様とは離れ、染色家が自身の"文様(型絵)"と"彩色"を創作することで、紅型と型絵染めの棲み分けが出来ているのです。
室伏弘子氏の作品は、紅型のみならず型絵染めを手掛ける染色家の作品とは、少々趣が違う様な気がするのです。
それは、紅型や型絵染めにありがちな"文様的な印象"が感じられないのです。
文様的な印象とは、抽象的な文様であれ、具象的な文様であれ、何かの型が制作者の意図によって図案となって染められているのです。しかし、室伏弘子氏の作品は、いつもどこか物語的な印象を感じさせてくれるのです。絵画的とまでは言わないまでも、眼にしていると、物語などが語られそうな感じなのです。
こうした作品表現力は、個性や趣の色濃い染色家の作品を捜しても出逢うことは殆どありません。作品制作の難しさではなくて、制作者の感性や表現が、他の染色家とは根本的に違っているのかもしれません。
室伏弘子氏の作品は、いつも物語的な印象を憶えるのですが、それと同時にどこか夢心地の印象があるのです。それも優しく、柔らかな夢の中の物語だったりするのです。
この作品も「夜空」を表現している様なのですが、何故か「Blueの夜空」なのです。「Blueの夜空」と言葉/文字にしてしまえば、違和感がある筈です。しかし、この作品を眼にして、文字通り、言葉通りの違和感が感じられないのです。現実的...、写実的ではないんですね。やはり、制作者たる室伏弘子氏の印象的な表現力が、作品に色濃く反映しているのです。夢の中の夜空であれば、違和感は感じられないのです。矛盾が矛盾でなく、それはそれとして受け入れられる夢の中の「物語」なのです。
強い作品性...、眼に焼き付くような個性は感じられないかも知れません。
しかし、居心地の良い感情を想うことが出来るかと思います。
染色家による型絵染めの作品は、少なくはありません。でも、こうした居心地の良い感情を想う作品を手掛ける染色家は、決して多くはないのです。
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