沖縄でつくられる染めの着物と帯。琉球本紅型と言われる染めものです。
その琉球本紅型は、京都や加賀、東京で染められる着物や帯とは、その制作手法のみならず、彩色や文様そのものまでもが、異なっているいます。
そもそも、「伝統的」と言う言葉の括りから派生して思えば、京都をはじめとした日本の染色と、かつて琉球国として独自の王朝を源とした紅型とは、「伝統」なるものが根本から違うのです。
琉球本紅型は、琉球国の民族衣裳を源としています。
彩色や文様は、琉球に伝えられた、言うなれば「伝統」を踏襲しているのです。
彩色は、東シナの海洋を想わせる南国的なあざやかさに満ちています。文様は、やはり、東南アジアの文化を想わせる文様が多く見られます。本紅型の文様は、どこか「文様化」を施されています。花は、花そのものではなくて「花の文様」として、鳥は、鳥そのものではなくて「鳥の文様」として..、そして、それらの「文様」は、まるで琉球文化に根付いた記号の如く、琉球の伝統的な「文様」として扱われているのです。
琉球本紅型を眼にしていると..、それだけで異国的な印象が感じられてくるものです。
こちらに掲載をさせて頂いた琉球本紅型は、かつて琉球王家に使えた紅型制作の宗家のひとつである「知念家」の流れを受け継いだ知念貞男氏による作品です。
知念貞男氏は、琉球本紅型の「宗家」の家系を受け継いだ染色家であると同時に、日本工芸会と言う日本染織工芸の団体の正会員でもあるのです。
そのため、知念貞男氏が手掛けるその作品には、沖縄の伝統的な琉球本紅型の印象に加えて、全く「新しい印象」をも感じることが出来るのです。新しい印象とは、伝統的なる琉球文化に根付いたものに限ることなく、現在的なる文化の中で制作者創意工夫を凝らした後、創作された文様から生まれて着ている様に思われます。
こちらの作品は、琉球本紅型を想わせる彩色が施されているのですが、どこか特有の柔らかさが感じられるのです。確かに、南国を想わせるあざやかさを保っているのですが、「それだけではない」あざやかさを保っているのです。また、文様も琉球の伝統的な文様とは、違います。何に近いのかは、分かりません。敢えて言えば、それは琉球本紅型しかないのですが、それそのものとは違うのです。そしてそれは、南国的、琉球的に加えて、都会的なる印象なのかもしれません。
知念貞男氏は、日本伝統工芸会に所属し、様々な知見を得ることで、新しい琉球本紅型の伝統を作品の創作に持ち込んでいるのかもしれません。
琉球本紅型でありながら、且つ、現代的な印象が魅力的な作品です。 |