"摺箔(すりはく)"とは、金箔を糊など生地に付着させる鎌倉時代頃から受け継がれて来た装飾技法です(東京国立博物館には、桃山時代に制作された摺箔の能装束が重要文化財として保存されています)。
ご存じかと思いますが、京友禅はいくつもの職人の手を経る分業制で誂えられます。この摺箔も、"箔"の仕事のみを生業としている職人が手掛けています。
この染め帯ですが、眼にすると"凛"とした品位が感じられはしないでしょうか?
豪華とか艶やかと言う印象ではない...、張り詰めた空気、清潔感の様な印象が感じられはしないでしょうか?
この染め帯には、数多くの手が加えられている訳ではありません。茶色系の引き染めとこの摺箔だけ..、それでも、この染め帯は十分に"人の心"を捉えてくれるのです。
職人の手仕事...、それも上質の手仕事と言うものを、この染め帯から想うことが出きるかと思います。ほぼ、摺箔だけ、僅かな引き染めだけ..、単純であればあるほどに、美しくなくてはならないのです。所謂、誤魔化しの効かない仕事なのです。
摺箔には、澱みや斑を見ること、感じることはありませんが、また一方では、全く"真っ平ら"と言う印象もないのです。施された"箔"を眼で追ってみると、この"箔"が描き出す文様に"息"を呑みます。時間が止まった様な緊張感みたいな感情を憶えるのです。職人は、ただ"箔"を置くのではない、"箔"によって"絵"や"文様"を描いているのかもしれません。そして、描き出された"絵"、"文様"...、桃山文様から静謐な勢いのようなものが感じられるのです。
また、僅かに染められた引き染めも、摺箔と同様に、単純に色付けをされたのではなくて、地色となっている"白色"とこの上質なる"摺箔"の質感にアクセントを付ける...、色彩の対比という効果をもって染められているのです。この摺箔に対峙した彩色の友禅は、無地染めでありながらも優美な印象を想わせる色を伝えています。
この摺箔の染め帯ですが、想えば"大胆"な構図なのかもしれません。しかし、大胆さの印象はなく、むしろ、繊細優美なる印象が感じられます。
こうした染め帯ですが、無地織の紬織、御召、無地のお着物、江戸小紋と言った"控えながらも"礼を想わせるお着物に対して、帯にて装いの意識を表現するものとなるかと思います。
この染め帯、艶やかでも、豪華でもありませんが、品位と上質な緊張感を伝えてくれます。こうした帯は、袋帯や西陣織にはない角度の装いの意識を表現してくれると思います。 |