こちらに掲載をさせて頂いたのは本場久米島紬。
色印象としては、本場久米島紬としては極めて珍しい色調です。
本場久米島紬は、天然染料..、主に島に自生する植物と久米島の泥にて糸染めが施され、織り上げられる絹織物です。機械化、近代化された労力に頼ることなく、何もかもが「ひとの手」だけに依っている織物です。
この久米島紬も、琉球椎、やまもも、ナカハラクロキ、コチニール、インド藍と言った5種の植物染料にて糸染めが施されています。
この織物の基調色となる地色は、主にやまももにて染め出された黄色系と琉球椎の白系灰色の糸を織り交ぜることで、柔らかく、明るい「黄色系」を実現しているようです。
この織物は縞織です。本来は、縞が、この織物を特徴付けている..、筈なのですが、この縞は不思議なほどに、見た眼に挿し込んで来ないのです。むしろ、この織物を遠目で見ると、縞は、この織物の色彩の中に溶け込んで行くのです。僅かに縞の印象を残しながら、無地織の様な表情に移って行くんです。基調色である黄色は、黄色、その色そのものではなくなって行き、更に色彩の柔らかさを増して行くのです。
そうすると..、縞織としての面白みに欠けるかの様に思われるかもしれませんが、実は、この縞織は縞そのものが特徴となっているのではなくて、この織物の彩色印象を特徴付ける効果を持っている様なのです。縞に配された色は、ピンク色と白色と緑色。最も特徴的な色である緑色は、縞と言うよりは「線」と言う表現に近い千筋です。白色の縞はピンク色の縞の個性を抑えるかの様に並べられています。どうやら、明るいピンク色も白色と並べられることで、その明るさが淡くなるようなのです。
要するに..、これらピンク色、白色、緑色の縞織は、特徴的な印象を思わせるようなのですが、実は巧くその個性を抑えられているのです。遠目に見ると、複彩色の縞が色の中に溶けて行くのです。しかし、溶けて言ったとしても、その眼に映る「色印象」は、無地織では決して得られない奥のある色となるのです。
草木を煮出して染められた絹の色は、強い色であれ、個性の薄い色であれ..、眼に強く映るものではありません。長く眼にしていても、眼に馴染み、また、単色であっても、どこか他の色の気配をも想わせるような曖昧さを持っているようなのです。
こちらに掲載をさせて頂いた草木染め紬織=本場久米島紬は、そうした草木染めがひとの眼に及ぼす効果を巧く計っているのです。
真っ平らんば縞織の紬織ではない、草木の彩色の柔らかさや織の奥行きを伝えるべく、多彩な色を配しているのです。
この久米島紬は、とても綺麗です。草木染め特有の柔らかな彩色の印象が見事な程に感じられるのです。こうした彩色は、ひとの眼に優しく映り、そして、見た眼以上に派手ではなく、そして、人肌の色に馴染みやすいのです。
明るい彩色の紬織です。珍しいほど綺麗な草木染め紬織です。そして、こうした草木の色は真綿の質感と相俟って温もりと柔らかさを伝えてくれます。
草木の色と手織真綿紬の質感をお楽しみ頂けるお着物となるかと思います。
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