手描き京友禅 染め帯/小千谷薄絹
朝顔の図(お単衣 夏季)

柔らかい夏織の小千谷素材の上に、白百合を染め描いています。
白百合という花なんですが、その名称の通り．．、特に「色が付いている」訳ではありません。けれども、その"白"のためなのか、その色以上に綺麗な色印象を憶えます。いやいや．．、色印象だけではなく、色と同時に、その百合の姿も眼にしている．．、だから、綺麗なんです。
百合の花という自然が生み出した花が伝える"白"と言う色の美しさと、百合の花特有の"立ち姿"の美しさが相俟って．．、白百合には、格別な美しさを憶えるんです。

そんな白百合の美しさを、帯の柄模様として、とても巧く染め描き上げられています。
友禅としても巧いし、絵としても巧く描かれている。百合の花そのものの姿．．、、花の大きさ加減と姿．．、そもそも白百合が持っているイメージを損なうことなく描かれている。

この白百合に対して...、夏季の染め帯であるにも関わらず..、背景を墨黒(僅かに赤みを感じさせるんですが)色としています。
濃い色目とは言え、暑苦しさは感じられません。
まるで、白百合の画を浮き上がらせている感じがする。
あえて、薄色としないことで、「白百合の画」の趣を描き出しているような感じを憶えます。

"いい姿"をした白百合の画です。
友禅であると言う以上の綺麗さと品位があります。背景色とのコントラストは、まるで白百合の画を愛でいているかのような趣を伝えています。古典というより..、ちょっと文人画的な空気感を漂わせているのかもしれません。
この友禅を手掛けて職人は、極めて質の良い仕事をこなしています．．、それと、この友禅の下絵なんですね。
この下絵．．、友禅の下絵として描かれたにもかかわらず、日本画の絵師が描いて貰っているんです。よくある古典的な白百合であったえも、これまであった、きものや帯地の柄模様の"写し"などではない。日本画家が、しっかり描いた"百合の姿"なんですね。
文人画的な空気なるものは、この日本画家の"意識"と手掛けた染人の"意識"が相俟って漂い出てきたものなのかもしれません。

立ち姿とちょっと文人画的な雰囲気のある綺麗な白百合の染め帯です。
単衣から夏季にお使い頂けます。