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真綿紬の着物(士乎路紬)と名物裂"花兎金襴"の帯...、着物と帯"あわせ"

西陣織名物裂「花兎金襴」帯地+士乎路紬「雲」着物と帯"あわせ"...、ご案内するお着物は"真綿紬"、それも泥染めされた真綿糸で織られた紬織物のお着物と、引き箔を使い織られた名物裂"花兎金襴"の帯との"あわせ"です。

そもそも、「"紬の着物"に対して"箔使いの西陣織の帯"をあわせる」ことを言葉だけで思うと、ちょっと違和感を抱く場合もあるかもしれません。
ただ、お話をもう少し入り込んでみると...、"あわせ"の趣向みたいなものが見えてくるかと思います。

"紬の着物"の"本来"的なお話をすると、生糸に向かない"くず繭"からつくられた織糸で織られた織物、そして、離島や山里で織られ、その土地の匂いを想わせる織物...、こうした織物から仕立てられた着物である場合が多いのです。
だから、普段使いの着物と言われる..、礼装には向かないし、飾られた品格と言う感じはないんです。

一方、西陣織は、"飾る"と言う趣向の上で発展し、伝承されて来た織物なのです。そして、"都"をその制作の地としている..、常に、文化があり、英知があり、趣向を求められた土地の中で育まれてきた織物です。

真綿紬の着物と西陣織の帯は"馴染まない"...、けれども"何時も馴染まない"と言う訳でない。

こちらに掲載をさせて頂いた真綿紬は、士乎路紬...、能登で織られている手織紬です。
この士乎路紬は、能登の地に伝承された織物ではなくて、手織紬の理想を求めつくられたただ一軒の機屋が制作する織物です。
そして、この士乎路紬は、この能登で柄模様が考案されるのではなくて、京都からの誂え依頼を受けることで制作を続けて来ていることも、他の紬織物と決定的に違う性質を違えている点なのです。

また、"花兎金襴"なる名物裂の西陣織も、"飾る"には"飾って"いるかもしれないけれども、絢爛たる印象はありません。趣味人に愛好された伝承されて来た名物裂の柄模様は、絢爛な装飾と言うより、"趣味趣向"に"飾られた"印象が色濃く残っているのです。
礼を意識するとか、誰か意識するとかではなくて、所有する本人の趣向ための織物と言う性格をこの西陣織は持っているのです。

士乎路紬に織り出された図案は、"雲"です。
この"雲"の図案なんですが、離島や山里で織られた類の織物にはみられない...、友禅や西陣織の図案としてみられることが多いんです。
着物の図案である"雲"の図案は、中国の神仙思想から来ている"瑞雲"を表していると聞いています。どちらかと言うと"吉兆"を掛けた図案なんですね。

西陣織名物裂「花兎金襴」帯地+士乎路紬「雲」この"雲"の図案が織り出された士乎路紬には、真綿紬でありながらも、"都"の匂いがするんです。

この"雲"の図案を織り出された士乎路紬は、名物裂の西陣織と同じく"都"の趣向が反映されている織物なのです。

何も綺麗なものだけが"都"の趣向ではない。
普段着的な装いの中にも、垢抜けした空気を漂わせる...、そして、"趣"に興じた"名物裂"の西陣織を"あわせ"る。

花兎が織り出された"引き箔"の加減は、この士乎路紬の"余所行き感覚"を上げてくれている。それぞれの色の感じが馴染み、それぞれの趣向が調和する。
垢抜けした、感じの良い空気が、この"着物と帯"の"あわせ"から香ってくる筈です。

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