小紋染め着尺
疋田雪輪に葵模様

雪輪文様と葵の図案．．、この小紋の柄模様を、簡単に説明すると、それだけでしかありません。
けれども、この小紋の印象は、それだけではないと思います。

この小紋なんですが、街着感覚の小紋ではなくて、"余所行き感じ"、または、お堅い印象の帯と適わせると、ちょっと礼を意識した感じのお召し物としてお楽しみを頂けそうです。

僅かな柄模様が、散らされているだけの小紋なんですが、「ひとつ上」と言う感じを伝えているんですね。
でも、この小紋に礼装感のある帯は馴染むかも知れないけれど．．．、この小紋そのものが、「お堅い感じ」を想わせる訳ではないのです。
それが、この小紋．．、このお着物の魅力かもしれない。

この小紋に染められた模様なんですが、もしかすると、単調な類いなのかもしれません。
雪輪と葵の図案を、ちょっだけ変えて、程よく散らしているだけなのです。
けれども、この雪輪も葵も、とても巧い図案で描かれている。
雪輪には疋田が施されている．．、ふたつ重ねられている雪輪は、ひとつが疋田、もうひとつは染め暈かしが施されている。そして、重ねされた葵の葉にも、疋田を施している。
地色と柄模様に施された彩色は、印象的に近い色が使われています。

全体の印象として．．、どこか特に主張するような色とかデザインがある訳でないんですね。地色と、地色を浮き上がらせている地紋は．．、そもそも、余所行きを意識した彩色です。
その彩色印象を崩すことなく、「疋田雪輪と葵模様」が、散らされているんです。この模様図案は、着物の「景色」と言うよりもアクセントとなっている。

余所行き感覚以上の小紋であっても、「お堅い感じ」があまり感じられないのは、この「疋田雪輪と葵模様」のデザインが、礼装印象と言うより、どこか「趣向」を狙っている空気があるからかもしれません。

ちょっと余所余所しさみたいなものがあって、品位も漂っている、そして、綺麗なお着物になると思います。ただ、それだけでなくて、ほんの少し、どこか「趣向的に遊んでいる」感覚を残している．．．、ただの余所行きのお着物だけではないんですね。