草木染め手織紬
緯霞み織
使用草木：梔子 桜 コチニール

 

草木染め手織紬をご紹介致します。

こちらの紬織物は、その色加減、または色の入り方、そして、織の表情．．、草木で織糸を染め、手織で織り込まれている．．、その質感覚がしっかりと伝わっています。

この織物は、郡上紬の制作手法に近い．．、玉糸と、紬糸を使い、染色のすべては天然素材の染色に限定している。

一見すると無作為に緯糸が打ち込まれているかの様な．．．、この緯の霞(かすみ)のような景色は、そのほとんどが緯絣織で表現をされています。

地色のようなベージュ色系は「桜」で染められている．．．、全体の景色をつくっている紫のような色は「桜」と「コチニール」が掛けられている．．、黄色は「梔子(くちなし)」。

色として存在感あるようであり、どこか曖昧な感じをつくっている。

絣織は、そもそも、整然と並べられていることが多いはず．．、幾多の緯糸を使い分けて、緯段の景色を織り出すよりも、この緯絣織で織り出された景色からは、草木の色が構成する「色の抑揚」みたいなものが、くっきりと浮き上がっています。

絣は、普通ならば「何らかの形を形成して」柄をつくる．．、けれども、この織人は、絣を、あえて「かたち」とするのではなくて、景色と映るかのように、まるでそこに"色"．．、草木から得られた"色そのもの"を織り込んでいる。
一方、幾種もの織糸を、感覚的に緯に織り込んで行く．．、絣ではなくて、幾多の緯糸を使い分けて織り出された緯段だけで表現した「霞のような景色」では、平面的な無地織に近い感じとなる傾向があるのです。
しかし、この織物のように、絣で景色を織り出すと、抑揚のある霞となって、まるで素材感そのものの様な景色になる．．、織の痕跡が残されているかのようなっている。
けれども、ここで織り出された「霞」は、実は、絣だけでつくられた景色ではありません。
絣織だけではなくて、複数の緯糸を感性に任せて織り込んで行くことで．．．、無地織の暈し加減を織り込むことで．．．、絣として"かたち"になった霞の景色を、あえて曖昧な感じとしている．．、絣を暈かしているんです。
こうなると、平面的でもないし、絣織だけの痕跡でもない。
しかし、色の気配だけは、定かな印象となって眼にする者の感性に響くのです。

繊細さというよりも．．、織の表情にしろ、色の印象にしろ、抑揚ある存在感があります。しかし、その存在感が．．、馴染むことがあっても、強く映るものではありません。織人の感性と草木から得られた"自然の色の気配"があるからなんだと思います。
上質な絹の織糸に、しっかりとした草木染めが施され．．、そして、織人の感性で織り上げられた景色には、眼に映る以上の直感的な柔らかさがあるのです。

草木の色が、抑揚ある色付いた霞の景色をつくっています。
眼には柔らかく映ります．．．、単彩でもないし、暈かし印象とも言い切れない。全体に、甘い紫の景色につつまれているんですね。とても印象は、はっきりしているのに、曖昧な感じが残るんです。色の気配が、この織物を覆っているかのようです。
織人の感性によって、自然の色が、織物の中で巧みに表現された草木染め紬織物です。