北村武資 制作：経錦袋帯
『花作土』

経錦(たてにしき)は、北村武資氏が人間国宝の認定を受けた織物です。
そもそも、この経錦は、かつて飛鳥/奈良時代初期の錦織に使われていた染織手法ですが、北村武資氏は、その織のみならず、その時代の文様までも自身の作品性として再現しています。けれども、その作品からは古典回顧している空気は一切感じられません。

『花作土』の図案は、古代ペルシャ・印度辺りの装飾デザイン『生命の樹』とイメージが重なります。『生命の樹』は、大地から生え伸びた大樹が花を咲かし、実を付ける絵を描いた図案です。それは、豊饒な土地、そして、繁栄を暗示する図案として、王族や貴族の調度品の装飾デザインに見られます。花の咲く豊かな土地をモチーフとした『花作土』も富貴栄華への祈りを暗示しているようにも感じられます。

この『花作土』の可憐な花のデザインは、ペルシャ・印度更紗の雰囲気と飛鳥時代辺りの高貴な装飾デザインとが調和している様にも見えて来ます。
愛くるしい薫りが香って来そうなデザインの袋帯です。