品川恭子 制作
手描き友禅染め九寸名古屋帯：唐衣

染色家.品川恭子氏制作の手描き友禅染め帯。
「唐衣」と銘が付けられた作品で、そもそも、中国の古い刺繍裂から図案が写されているそうです。

この「唐衣」に施された図案と彩色は、他の友禅作品では見掛けない独創性に満ちていると思います。
染め描かれている図案は、説明を受けない限り、一体何なのか分かりません。「野菜」「貝」「纏(まとい)」の類いでしょうか？　そう想っても、はっきりとした答えが分からないままでいると、何か他のものに見えてくる気がします。例えば、染め描かれたそれらが「踊っている」様にも想えて来るのです。

不思議な図案なのかもしれませんが、見ていると感情に馴染んで行くのを感覚を憶えます。始めて目にする図案や彩色の筈なのですが、もしかすると、記憶のどこかに残っている図案や彩色なのかも知れません。着物や帯とかではなくて、ずっと昔の古典文化の中によく似た図案や彩色を憶えていて、それがこの作品と重なるのかもしれません。

独創性に満ちていて、不思議な雰囲気を想わせるかもしれません。
けれども、見ていても感情が馴染んで行き、豊かな感覚を憶えます。それは、美しいとか、趣があるとかを超えた、文化的な空気に包まれているからなのだと思います。
知性と品位を伝える染色工芸作家作品です。