手描き友禅 塩瀬.染め帯
唐松

上質の友禅仕事は、色々と良く出来ていると思います．．。

まず当然のように「色」が良い。
何かが良くて、何が良くないのか．．、その基準なんてものがある訳ではないけれど、例えば、上質の友禅に施される"色"には、たとえほんの僅かな色遣いであっても職人の"感覚"や"意識"みたいなものが感じられるんですね。そして、何かも"一様"な感じがない．．、やはり、感性的なものを想ってしまう．．。
もしかすると、眼にしている方の感性がついつい蠢いてしまうのかもしれません。細かく、そして深く見れば見えるほど、多くの何かが見えてきそうな気配を憶えてしまうようです。

この染め帯は、巧く出来ている．．．、主題は「唐松」。
この図案は、特別なデザインではなくて、日本の伝統工芸品の中でも見掛けることのある図案です。松の葉を扇面状に拡げて、菊花文様のように上からみた際の「かたち」を図案化したものです。
図案として、とても凝っていて、かつ、精巧さを伝え、そして、どこか洒落た感じがある。もちろん、「かたち」として美しい。
この「唐松」が、上質極まりない友禅で染め描かれている。
この「唐松」は、一様ではなくて、僅かずつ「かたち」と「色」に違いが加えられている．．．、同種同類でありながらも、それぞれが僅かに違いを持ちながら整い揃えられている。それは、まるで、美しい音色と響かせる和音を構成する音と重なって想える．．。「色」と「かたち」が制作者の美的な感性によって調和を図られているのかもしれない。

特に、印象的な彩色が使われている訳でないし、奇を衒った図案でもないけれど、眼にする者の感覚や意識に響いてくる様です。

上質の手仕事が施されているだけではありません。
古典的な文様図案を、現代的な感性と意識で染め描かれている．．．、だから、古典模様でありながら、古い感じがしない。
きちんとした．．、純日本的な格調と品位を保ちながら、現代的な綺麗さを伝えているんですね。