経錦：九寸名古屋帯 
正倉院文様写し『花鳥梅花文錦』
 

経錦(たてにしき)で織られた九寸名古屋帯『花鳥梅花文錦』。
図案化された梅の花を囲むように、葉を啄む鳥が配されています。花の周りを襷状に鳥が囲む姿は、どこか愛らしく、そして、雅な香りが伝わって来るのを感じられるかもしれません。この作品は正倉院に伝わる『花鳥文錦』を基にデザインされています。

正倉院伝来の文様の中でも、経錦(たてにしき)で織られた錦織の織物は、雅楽が奏でる音色のように穏やかな品格を伝えています。
経錦は大陸より伝来した最も古い織物です。三つの色を経に織り出すことで文様が表現されています。僅か３色という限られた彩色にも関わらず、経錦の織物は格調高い装飾性に満ちています。色と色、あるいは、模様と模様が、穏やかに響き合うことで万葉の織物である経錦特有の印象が生まれている様に感じられます。

『花鳥梅花文錦』は、正倉院御物であることから推し量ると、およそ1200年以上前の古代のデザインに相当するかもしれませんが、不思議なくらい古い感じがありません。時代とか時間、古いとか新しいとかのイメージが伝わって来ないのです。
もしかすると、それは、この『花鳥梅花文錦』のデザイン性が、後世の日本の文様デザインに影響を与えているからなのかもしれません。完成されたデザインなんだと思います。

煌びやかさはなく、派手さもありませんが、優雅さと品位、そして、趣を備えた織物(帯地)です。
余所行き感覚のあるお着物、または、無地系の織物(御召、紬織)などとあわせてお使い下さい。堅苦しくない"きちんと感覚"みたいなものを演出してくれます。