重要無形文化財
越後上布八寸名古屋帯『墨』

手績みの苧麻糸を使い、いざり機(地機)で織られた越後上布八寸名古屋帯。この八寸帯には、手績みの苧麻糸の中でも、あえて不均一な苧麻糸が使われています。緯にきなりの苧麻糸、経に染められた黒色の苧麻糸を使い織り出すことで、苧麻織特有の柔らかさと野趣を想わせる素材感がつくられています。
他の自然布では得られない素材感や表現性は、苧麻の栽培から機織まで、制作に関わる総てが専門の職人の手仕事で賄われているからです。染織工芸作家の作品のような独創的なアイディアや創作性はありませんが、この織物からは、制作に関わった「ひとの気配」が伝わってくるのが感じられます。それは、少なくても100年以上前と変わらない手法で制作された越後上布ならでは気配なのかもしれません。

夏織物に関わらず、墨色が魅力的で、やたらと涼しげに映ります。