重要無形文化財:越後上布
制作:小河正義
越後上布は、新潟県南魚沼市で織られる平織の麻織物。
雪国としての地方文化の中で伝承され、原材料(カラムシ)を始め、その制作に関わる技術のすべてにおいて純粋な古法によって制作されている麻織物なのです。その古法とは、原材料となるカラムシから青苧を績む技術を含め、奈良時代から殆ど変わりなく伝承されています。
つまり、越後上布は、およそ1300年前の日本染織文化の記憶を現在にまで継承している織物なのです。
そして、この越後上布は、1955年国の重要無形文化財総合指定第1号に指定され、2009年には日本の染織では初めてユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。
重要無形文化財としての要件は以下の5つです。
1.すべて苧麻を手うみした糸を使用すること
2.絣模様を付ける場合は、手くびりによること
3.地機で織ること
4.しぼとりをする場合は湯もみ、足ぶみによること
5.さらしは雪ざらしによること
(現在、この指定要件を満たし、重要無形文化財の認定を受ける事の出来る越後上布の着尺は20反から30反程度(無地織、縞・格子織を含む)とされています。)
こちらに掲載をさせて頂いた越後上布は、越後上布技術保存協会制作機屋で制作された作品。
この作品は、苧麻糸の細さや苧麻織物として打ち込みの良さなどの文化財としてのクォリティの高さはもちろんの事、絵絣構成のデザイン性、そして、そのデザインを織り出す絵絣の技術には、伝統的な越後上布ならでは工芸的な美しさをみることが出来ます。
"絵絣"となっている部分が、緯絣だけ織り出されているのに対して、その"絵絣"の間に織り込まれた"井桁絣"は、経緯の絣で織り出されています。絣を織り分けることで、絵絣は緯絣のため白加減が甘く、井桁絣は経緯の絣のため、真っ白に抜けるように見えるのです。
二種類の絣織を巧みに織り出すことで、「絵」に奥行きが生まれるのです。複雑に織り出されていながらも美しく映る効果を、自然な感じで表現されています。
こうした作意は他の土地の織物では見掛けることではありません。薄機の染織文化に育まれた美的感覚なんだと思います。
素材(苧麻糸)の希少性や歴史だけではなくて、現代の制作者の美しい手仕事でつくられた越後上布です。
* | 越後上布との帯あわせ.. |
・ | 藤布八寸名古屋帯(制作:加畑兼四郎)とあわせました。 |
・ | 新里玲子制作:宮古上布九寸名古屋帯(木麻黄/琉球藍)とあわせてみました。 |
・ | 薄絹手描き友禅染め帯(御所解模様)とあわせみました。 |