夏季/単衣：首里花倉織一絽『灰桜』
制作：山口良子

首里織は、琉球王朝の王府である首里で受け継がれてきた織物です。
沖縄の他の織物との違い、王族を始めとした貴族や士族の衣裳として発展した織物のためなのか、デザイン、色彩などに格調と端正な美しさが感じられます。その首里織の中でも、最も格式高いとされていた衣裳こそが花倉織。王族のみが纏うことが許された、絽織と花織を組み合わせられた単衣絹織物です。
現在の首里織においても、この絽織と花織を組み合わせる複雑な構成の織物のため、制作される作品数は限られています。

こちらに掲載をさせて頂いた首里花倉織は、染織家：山口良子さんの作品。
山口良子さんは(首里織人間国宝)宮平初子氏に師事した後、自身の作品制作されている首里織染織作家です。

こちらの作品は、伝統的な首里花倉織には見掛けないイメージのデザイン構成と色彩感性で制作されています。
精巧に菱を形取って行くように花織が織り出されていますが、その花織は流麗な曲線として眼に映り、絽織、そして、灰桜を想わせる彩りと調和して、格別な美意識が感じられます。幾何学的なデザイン構成にも関わらず、冷たいイメージはありません。花織は、淡い彩りの中で鏤められ、絽織のせいなのでしょうか、少しだけ煌めきを放っているように見えます。
理知的なデザイン性と甘美な彩りは、品位や知性、趣を伝えるお着物に仕上げられています。

お単衣の時季よりお召し頂けます。