八重山上布(沖縄県指定無形文化財)
糸数江美子 制作
使用草木：琉球藍　椎の木　楊梅

八重山上布は、古くから八重山諸島で制作されて来た草木染め手織麻織物です。
絣と彩りが調和したイメージは、他の麻織物にはありません。八重山上布は、亜熱帯の八重山で自生した植物を使った染料を使い、八重山でつくられた苧麻糸を染めることで特有の彩りを生み出しています。そして、織り出された記号のような絣模様一つ一つは、単なるデザインに留まることなく、その土地に伝わる意味をも表しています。制作に関わるほぼすべての原料や素材、そして、手法・デザインまでが小さな島々の中で賄われ、収められています。
八重山上布が、光と色彩に溢れているのは、東シナ海の陽光の下で制作されて来た苧麻織物だからのかもしれません。絣模様は八重山の風土を伝える寓意のようなものなのかしれません。

こちらに掲載をさせて頂いている八重山上布は、染織家糸数江美子さんの作品。
ナチュラルな色の中に、伝統的な絣模様が織り出されています。シンプルなデザインの絣をクリエイティブに組み合わせることで、まるで譜面を想わせるようなデザイン構成に仕上げられています。ひとつの絣、組み合わされた絣、草木の色に彩られた絣、見ていると心地好い八重山の音色が響いて来そうです。制作者が想い描く八重山の心象風景がこの作品の中で表現されているのかもしれません。