『柚木沙弥郎の染色　もようと色彩』

柚木沙弥郎氏は、1922年生まれの日本を代表する染色作家です。
東京帝国大学で美学/美術史を専攻した後、倉敷の大原美術館に勤務した際に『民藝』を知り、後に人間国宝となる型絵染め染色作家芹沢銈介氏に師事しました。それ以来、染色作家として活動されています。
1972年に女子美術大学の教授に就任、また、1987年には同大学学長に就任され、自身の作家活動の他、後進の育成にも力を注がれていました。97歳となった柚木沙弥郎氏の作品は、現在も尚、国展を通じて『今年の作品』を観ることが出来ます。

豊田市民芸館は、矢作川畔の里山に位置していて、その第一民藝館とされる建物は、東京駒場にある日本民藝館が改修された際にその一部を譲り受けられているため、日本民藝館に同じ装飾が施されています。

展示作品は、1940年代からほぼ現在に至る作品(主に日本民藝館所蔵の作品)が展示されていました。「現在の作品」とは、近年、国展に出品されていた作品です。つい数年前に国立新美術館で展示されていた作品を、民藝館の中で、70年前に制作された作品と同時に観ることが出来ました。
ところで、｢民藝｣と聞くと「用の美(日常的な暮らしの中の美？)」を想い付くんですが、この展覧会での柚木沙弥郎さんの作品を観て、国籍や特定の文化を想わせない色彩やデザインが感じられました。それと、多くの作品が「普段では見慣れないヘンなかたち」をしたデザインなんですが、まるで違和感がなく、むしろ、気持ちの良いイメージを残してくれましたね。アート感に満ちていると思いました。