貴き西陣織..、龍胆襷文/勝山健史

西陣織袋帯 龍胆襷文 勝山健史竜胆(りんどう)の花と葉をデザイン化した図案は、<和の文様>の中には幾つか見掛けることが出来ます。

"竜胆"から派生した家紋に至っては、紋帳をみていると、ちょっとした数の"竜胆"があしらわれた家紋があるんですね。
(私的には...、この"りんどう"って言葉の響きと当てられた漢字の雰囲気が、何となく文学的な知性みたいな感じが巧く嵌っているよう思うんです。ちょっと惹かれる文様なんです。)

また、家紋とは別に、有職文様としての"竜胆丸文"なる文様...、喜多川俵二氏の夏織物"顕紋紗"の中に"竜胆丸文"と銘が付けられた織物があります。
そもそも平安貴族の装束に織り込まれていた文様でもあるんです。

こちらに掲載をさせて頂いた西陣織(袋帯)は、勝山健史氏の作品。
有職文様そのものを想わせる竜胆の文様が織り出されています。

この文様だけをみてみると、もしかしたら特に目新しいと感じられるものではないかもしれません...、けれども、実際に眼にすると、そして、この織物に触れると、とても新鮮な感じを憶えるんですね。
よくある感じのデザインであるにも関わらず、"ありきたり感"がまるでない。

ほぼ白色と言っても良いくらいの織糸で文様が織り出されているんです。
きっと、この織糸が極めて綺麗なんだと思います。他の西陣織、絹織物にはない程に、綺麗な織糸....、その織糸ただそれだけ、それもたった一色だけで織り上げられているからこそ、特別な存在感を伝えるのだと思います。

新鮮な感じを湛えながら、品位と格調を伝えている。
保守的な姿勢ではなくて、むしろ、伝統的な"竜胆文様"に対する制作者のアイデンティティもって制作されたのかもしれません。

(塩蔵繭/織糸.使用)