染めもの..、姿と形

玉縞江戸小紋の玉縞。玉縞は1寸に26本の縞を染めている江戸小紋を指します。反物の巾が1尺とすると、実に260本の縞が染められている事になります。 まさに職人芸です。

着物って言うと..、ちょっと綺麗な彩色をイメージする訳ですが、こうした地味な仕事にも、何百年に亘る愛好者がいたから、現在に至るまでこうした染色が残っている訳です。

江戸小紋は、伊勢型紙を生地に載せて糊付けして単彩に染め上げる。およそ3丈4尺...13mほど延々と、型を付ける作業をするんです。その中には、"無地"と見間違うほどの細かな柄模様を微塵の狂いなく型付けをします。

とても地味な仕事です。"華"や"優雅さ"などは一切感じられない。
仕事も地味だから、染め上った江戸小紋にも"華"も"優雅さ"も"派手さ"も感じられない。

でも、何百年と人を惹き付けてきたこうした"地味"な江戸小紋の魅力は、一体何処にあるんでしょうね?

江戸小紋..、無地に見えるけれども、実は無地ではない。
むしろ、無地と映るほど至極細微な柄模様を嗜好する。質実剛健な手仕事の魅力なのかもしれません。何となく江戸っぽい..、"色気"や"華"はないけれども、偽りのない職人の手仕事が張り詰めている。

そんな江戸小紋は、細かく、精巧で染められていればいるほど美しい..、要するに、無地に近くなればなるほど、凛とした礼装感を伝えてくれる様です。江戸小紋は地味であるけれども、凛とした礼装感を想わせてくれます。
それは、偽りのない職人の手仕事が美しさから生まれた空気感なんです。

ところでちょっとした余談なんですが..、偽りがなかった筈の江戸小紋の手仕事も、何時しか「道具の代替品」を使う職人が多くなって来たようです。何百年と受け継がれて来た江戸小紋ですが、その魅力はこれからどうなって行くのでしょうか?