草木染め手織紬と型絵染め || 郡上紬と添田敏子..、"着物と帯のあわせ"のCocept

添田敏子と郡上紬以前に、"着物と帯のあわせのCocept"のお話をしたと思います。

着物を着る"その人"の"美意識"こそが、"着物と帯のあわせ"のConceptとなる...、と言うお話でした。

例えば、秋となり冬を迎える..、袷のお着物を帯付きで楽しみ、そして、羽織を楽しむ季節を迎える。
また、時節/時季を感じ取って、着物や帯に"それらを着物の季節"として演出する(秋には紅葉の着物/毬栗の帯など)。

もちろん、TPOを意識した"あわせ"も美意識の表現だと思います。
クラッシックのコンサートに、音楽を想わせる帯(例えば、譜面が染め描かれた染帯)を使ってみると言うものです。

今回の"着物と帯のあわせ"のお話は、着物と帯のバランス感みたいなものをテーマとしてみたいと思います。
ちょっと漠としたテーマなんですが、今回は"趣味趣向の凝ってみたあわせ"の中の"着物と帯のバランス感"を取り上げています。

ご紹介をさせて頂いた着物は郡上紬。
帯地は国画会所属の染色家/添田敏子制作の型絵染め帯。

郡上紬は、「繊細優美」「装飾的な綺麗さ」などと言う言葉とは真逆の空気感のある草木染め手織紬...、紬糸の素材感と何も付加されない"素のまま"の草木の色彩だけで織られた紬織物です。

織物であっても精巧さとか端正さなどは感じられないけれども、織人の感性とか息遣いが、直に伝わってくるような特別な空気感があるのです。


陶器陶芸に例えるならば、楽焼のような存在かもしれません。

こうした空気感ある手織紬ですが...、紬だからと言って、即ち、安易な帯あわせに走ると、実は、帯が"弱く"映ってしまうことがあります。

同じ手間暇を掛けて織られた本場結城紬などは、実は郡上紬に比べて"洗練されたもの"があるようで、そこそこ"着物と帯のバランス"に偏りがあって"馴染んで"くれる場合があるのです。

郡上紬は、染織家の美意識が強く反映された織物に近い"存在感"があるようなのです。
その見た眼は、素朴な手織紬であるようだけれども、実は、個性を秘めているのです。
じっと眼にしていると、最初、眼にした時とは違う色や織の加減が見えてくるし、感じられていた印象が移ろい変わってくるのです。

添田敏子 郡上紬添田敏子さんの型絵染めは、まるで近代西洋絵画の如き強い迫力があります。

ただ、色彩と図案を表現しているのではなくて、染め描かれているもの以上のものが伝わって来そうです。
そう言う意味でも、単純な"型絵染め"に止まるものではなくて、制作者の美意識が「型絵」と言う表現を通じて昇華された...、美術的なニュアンスがあるのです。

こうした染織作品としての帯は着物を選びます。
郡上紬と同じく...、安易な着物あわせは、帯だけが浮いてしまい着物がまるで見えない"あわせ"となります。

着物と帯の"あわせ"を考える際に、趣味趣向が凝らされた着物と帯を"あわせる""重ねる"と言うだけではなくて、それぞれの質感の程度を"あわせ"ることで...、着物と帯、それぞれの存在感が主張過ぎることなく収まるものかと思います。


こちらにて掲載を致しました添田敏子さんの型絵染めは、どうやら「野菜」を基礎図案とされているようです。民芸を想わせる絵画的な型絵染め帯。
そして、郡上紬は、草木の色と手織で織られた紬織の着物。
どちらも民芸的な趣向が感じられる着物と帯です。

着物と帯の存在感だけではなくて、民芸的な趣向と言う雰囲気をも意識した"着物と帯のあわせ"です。