"赤"、あるいは"赤"..、着物ならではの色を楽しんでみませんか?//蘇芳の紬と型絵染め帯

蘇芳と栗を染料とした小格子の手織紬二月となり、寒さ/冷たさは先の月よりも冷え込む日々が続くこともありますが、陽光には僅かな明るさが感じられるようになりました。

お着物をみる眼...、特に"着物の色"に対する見え方も、この月になると少々違った感じ方をするのではないでしょうか?
それまで感じなかった、または、あまり関心がなかった色に何となく惹かれる....、それはこれからの季節特有の陽光が色に表情を与えるようなのです。

今回の"きものと帯のあわせ"では、"赤"と言う色を基調とした"あわせ"でお話をつくってみました。

ただ"赤"なる色は、一般的には着物の色目としてはあまり"受け"の良いとは言えないようです。妙に分かりやすく、主張をしてしまう色に該当して、"無難な色"とは対局におかれがちな色とされているようです。
ただ、その類の"赤"は、そもそも"色"に表情もなく、"安っぽい赤"なのです。

こちらに掲載をさせて頂いた紬織の着物の"赤"...、"赤"と言うよりも、むしろ"赤紫"なんですが、この"赤紫"とオフホワイトが小格子をつくって、"赤"などと言ってもちょっと"いい感じ"の色となっています。

安っぽい感じもないし、野暮な雰囲気もない。
むしろ、着物としては目新しい感じがするくらいなのです。

この赤紫は蘇芳なる植物染料からつくられた赤紫で、赤としては紫の雰囲気を混ぜながら、少々落ち着いている。
この落ち着いている感じが、オフホワイトと小格子をつくることで"いい感じの赤"となっているのだと思います。

また、こうした感じの"赤"は、これからの季節の陽光に馴染みやすい色でもあるのです。仄かなる明るさを伴った陽光は、この"赤"に対して"より深み"を曝してくれるのです。
ですから、ちょっと温もりある印象の色として眼に映る傾向にあります(反対に秋の陽光では堅い印象となりがちです)。

この紬織の蘇芳から得られた"赤"は、自然を想わせる色艶の表情を保っています。陽光の加減によって、まるで"色"が生きているかの様に、その色艶の表情は移り変わりをみせるのです。
そして、自然の恵みからつくられたこの"赤"は、何よりも、ひとの肌に馴染む"色"でもあるのです。

着物に使われている"色"には、時として、着物でしか楽しむことの出来ない色...、着物ならでは色と言うものがありますね。蘇芳の赤もそんな色のひとつです。
こうした自然の恵みから得られた色を、季節に応じて楽しむ、着物ならではお話だと思います。

草木染め手織紬と型絵染め帯ここでは赤い"撫子"の型絵染めの帯とあわせてみました。

この帯...、素材は紬地で、地色の"きなり"に対して、やはり、紫色を帯びた赤色で染められています。
ほぼ赤の濃淡と地色である"きなり"だけの型絵染めです。赤い顔料で染められているため、やはり、落ち着いた"いい感じ"の"赤"です。

この型絵染めは、濃淡に染め分けられ、また、"きなり"との対比の中で、"赤い撫子"が何となく"踊っている"かのようにも見えます。絵としても..、帯としても..、趣味に豊かさみたいなものを伝えてくれると思います。

赤い紬の着物と赤い型絵染めの帯の"あわせ"です。

自然の恵みから生まれた"赤"。
着物でしか楽しむことのない"赤"。
この季節から眼に馴染む"赤"。

色の豊かさを楽しむ着物と帯の"あわせ"なのです。

これからの季節...、ちょっと意識を変えて着物を楽しんでみるのも良いのではないでしょうか?