八重山苧麻織の着物と花織芭蕉布帯....、真夏の着物あわせ

八重山苧麻織と芭蕉布七月も半ばを過ぎ...、名古屋では蝉時雨が響いています。
「何をしても暑い日が続く時季」なんて言われることもあるみたいです。

暑い々々を繰り返しながら、薄着になって凌いでいるよりも、盛夏の着物を着ることで感じる涼感というものあるようです....、時に言われる「夏の暑さだからこそ感じられる涼感なるもの」のひとつではないでしょうか?

この度の"着物と帯のあわせ"では、盛夏の麻織のお着物と帯をご紹介致したいと思います。

掲載をさせて頂いているお着物は、八重山諸島で織られた苧麻織物です。八重山で採られた麻より手績(う)みされた苧麻糸が織糸(緯)に使われています。
八重山上布と同じ織糸構成なんですが、糸の染色手法の違いとか織人が個人の織人であることなどの理由で、八重山上布とは違います。

南国的な綺麗なブルー色系格子織の苧麻織物なんですが、そもそも、こうした印象の格子織は、八重山上布には見られないですね。
色の加減....、ブルーの色の感じも八重山上布とはまるで違う。

この苧麻織のお着物ですが、先にお伝えをしたように、八重山上布の織人ではない個人の織人...、八重山諸島に暮らしている織人が制作した織物です。
経験的に八重山上布の癖がないために織人個人の感性が織の表情として活きてくる訳です。そして、織糸は、八重山の手績みの苧麻糸が使われているけれども、糸染めに使われる天然染料は、八重山に自生している草木に限定されている訳ではない...、色の感じが八重山上布とは違って感じられるのは染料となる草木が違うためでもあるからです。

要するに...、この苧麻織のお着物は、南国的な印象を伝えているんですが、八重山上布の印象がないのは、草木染料と織人に関係しているんです。
織人の感性によって織られた着物ですから、その土地の匂いよりも、むしろ、個性を想わせる特有の雰囲気みたいなものがある訳です。

では、盛夏の暑さに対しては、その涼感は如何なものかというお話ですが...、もちろん、手績みの苧麻糸を緯糸に織り込まれている<麻のお着物>です。絹織物や単なる麻のお着物と比べるならば、体感的な涼感は、上質な上布並に期待できる筈です。

また、この苧麻織物特有の<視覚的な涼感>...、南国を想わせるブルーと白色のコントラストは、他の織物ではみられない夏の色彩を伝えています。
どこの夏織物にもない色彩感性です。織人の色彩感性の豊かさみたいなものが、織物を通じてちゃんと表現されているんです。涼しいだけではない...、手織の着物としての...、また、草木染めの着物としての魅力が、しっかり感じられる着物なんです。



帯は、喜如嘉の芭蕉布をあわせてみました。

織人の感性が響いている着物にあわせるため、よくある感じの芭蕉布ではなくてヤシラミ織と花織が施された個性ある芭蕉布を選んでみました。

八重山苧麻織と芭蕉布当初、白絣が印象的な八重山上布の帯を載せてみたのですが、着物の色彩に被らないと言うだけで...、帯が着物の中に沈んでしまう感じが出てしまったため、個性を想わせる帯を考えてみたのです。

着物の格子織と帯の格子が重なるようでもあり...、全く違う印象を残しているようにも見える。とは言え、着物と帯、それぞれの個性が相容れないと言う訳でないんです。南国の織物と言うひとつの空気の中で馴染んでいるのかもしれませんね。

この八重山の苧麻織物の着物に対して越後の苧麻織の帯だったりすると、色彩印象の加減なのかバランス感覚が、何となく整わなかったりするんですね(むしろ、時に個人染織家の織物の帯が馴染んだりします)。

この着物と帯の"あわせ"のpointは、単純に"麻織物が伝える涼感"に止まっているではなくて、南国印象の着物と帯を楽しんでいると言う印象が際立っている...、その次ぎに、視覚的な涼感とか素材が伝える涼感を伝えているんです。

さて..、この着物と帯の"あわせ"なんですが、南国印象がpointとなっているとお話をしましたが...、南国と言っても"土臭さ"みたいなものは感じられないんですね。確かに"南国"と言う地域的な空気が色濃く感じられるのでうが"ローカル"って感じではない。

格子織とか花織が施されていたとしても"民芸的"とも違うようなのです。
着物にしても"織人"の感性が、しっかり沁みているし、帯にも個性が巧みに表現されている。
真夏の街の中でも"野暮さ"と言うものがない。

真夏の暑さは、これからまだまだ続きます。
"涼感"だけを求めるだけの"あわせ"だけではなくて、装いの感性とかセンスみたいなものがしっかり効いてる...、そんな着物や帯の"あわせ"を心掛けることで、涼感以上の美しさを真夏の着物姿に重ね感じられると思います。