お単衣の装い...、夏久米島と桶絞り染め帯

夏久米島五月も中頃となって参りましたので"きものあわせ"も、そろそろ"お単衣"を考えてみたいと思います。

今回は、まず"余所行き"を意識した"着物と帯のあわせ"を取り上げてみます。

掲載をさせて頂いたのはお単衣/夏季を予定して久米島で織られた絹織物です。久米島紬と言えば、緯糸に真綿糸が使われるのが普通ですが、お単衣/夏季に向けて織られる久米島紬は緯糸に"単衣を意識した撚糸"が使われています。
手触りは、真綿糸が使われている久米島紬とは、全く別の織物の質感が感じられます。"さらっ"とした単衣/夏季の織物特有の質感です。

色目ですが"きなり"としてみえるかもしれませんが、琉球椎なる琉球織物では比較的よく使われる植物から煮出した色で糸染めが施されています。白色、きなり...、と言うよりもオフホワイトと言った感じです。

余談ですが..、久米島は東シナ海の離島なんですが、無地織...、特に"ゆうな"や"琉球椎"で糸染めされた無地織は、どこか垢抜けした印象が感じられるのです。

お単衣/夏季+オフホワイト+無地織...、ここでは夏久米島を取り上げていますが、こうした組み合わせの織物、または染のお着物は、"もの"に質感が伴わないと"平たい"印象になってしまう傾向が強いので、お着物を選ぶ際に意識的に質感の高いお品を選ぶ必要があります。

夏久米島は、植物染料で糸染めをされ、緯糸を入れるのも"杼"を投げて織られた手織紬です。無地織であっても"深い"んです。
着物としてお仕立てをされると反物以上に質感が浮いて来ます。


この無地織に"あわせ"たのは、紬地に桶絞りと小紋染めが施された染め名古屋帯。紬地と言っても真綿の感触よりもう少し"さらっ"とした手触りがする生地です。
江戸時代の小袖文様が写された染め帯です。
単純に紬地に染めたのではなくて、桶絞りが施されているため、立体感が伝わって来ます。

この桶絞り染めの帯は、特に"単衣"を意識して染められた訳ではありません。
袷の季節でもお使い頂いても良い帯地ですが、ここでこの染め帯を取り上げたのは、着物は単衣と夏季、帯は袷から単衣までと、着物と帯の他の季節を踏まえた使い回しをも考えてみたかったからです。


桶絞り小袖文様染め帯この桶絞り染めの帯と琉球椎の夏久米島の"あわせ"のポイントは、色目のバランスと無地織の着物に対して桶絞りと言う質感ある帯と言う対比を考えてみました。

琉球椎/オフホワイトの無地織は、決して"平たい印象"がある訳ではないのですが、遠目からみるとどうしても「白」として眼に映りがちです、それに対して帯をあまり"あっさり"させるものちょっと...、"あわせ"としては面白くはないような気がするのです。
単衣と言う時季を意識すると、"くどい""重い"印象の帯も控えるべきかと思います。

掲載した桶絞りの小袖文様は、大柄な文様でありながら、彩色の数も控えられているため、"くどさ"や"重さ"と言った印象もなく...、"薄色"の着物に対してならば、単衣的な使い回しが出来るんです。
また、この帯の素材感も、単衣として使われると"より単衣っぽく"感じられるのは面白い事なんです。


こうした"着物と帯のあわせ"のTPOを考えると...

以前、菊池洋守氏の薄色の綾織と西陣織名古屋帯との"あわせ"でもご紹介した"「きちんとした」感じよりも少しだけ「余所々々しい」感じ..、「普段」とは「違う」よそいき感"の「あわせ」"に近いと思います。


    *食事会や同窓会などの"集い"や"宴"。
    *ギャラリー/画廊などでの催し。
    *美術館/博物館などの展覧会。
    *オペラ/クラシック、歌舞伎などの舞台鑑賞。

など..、と言うことになりますが..。

先に、琉球椎で糸染めされた無地織の夏久米島が"垢抜け"した印象が伝わってくるとお話をさせて頂きました。
一方、桶絞りと小紋染めにて表現されているのは小袖文様写しです。この"小袖文様"とは、そもそも江戸時代の華美なる着物だった訳です。"きちん"とした着物から写された文様なんですね。
垢抜けしたオフホワイトの無地織に"かつて華美だった"小袖文様写しの帯との"あわせ"なのです。

"単衣"の季節..、どこか涼感を想わせ、都会的で、ちょっと余所々々しさのある"着物と帯のあわせ"となります。